パン+サブスク=パンスク
一定期間定額で商品やサービスを提供するサブスクリプションサービス、いわゆる「サブスク」が普及し始めたのはここ数年のこと。
飲食の世界も例に漏れず、新しいサービスが次々と立ち上がっている。
▲「パンスク」ホームページより
「パンスク」は、この2月にローンチしたばかりのパンのサブスクリプションサービス。
毎月1回、全国の評判のパン屋さんからパンが届くという、いわば「パンの定期便」なのだが、わずか3カ月弱で会員数2,000人を突破するなど、一部のパンラバーの間でじわじわ話題になっているという。
今回はこのサービスを実際に試してみることにする。
はたして味は? また、手間やコスパの点はどうなのだろうか。
「知らないお店」の「知らないパン」に出会ってしまう
パンスクのサービス内容のをまとめると、こんな感じになる。
- 全国の契約ベーカリーから月替わりで6〜10種類のパンを配達
- 焼きたてを即冷凍してクール便でお届け
- 配達されるパンの種類、製造ベーカリーはおまかせ
- 代金は月額3,990円(税、送料込み)
ふむふむ、なるほど。
「月に1回、お手元に全国のベーカリーから直接パンが届きます。ご自宅のオーブントースターで焼きたてパンをお楽しみください。どのベーカリーのどのパンかは箱を開けてのお楽しみ。日本全国、津々浦々のおいしいパンとの出会いを提供します」
ということらしい。しかし、冷凍したパンなど、本当においしいのだろうか。
注文したところ、パンスクのロゴ入りダンボールが自宅に届いた。
横24センチ、奥行き18.5センチ、深さ15センチ。そのまま冷凍庫に保存できる大きさ。
「“おいしい”に出会う、パンの定期便」。つまり、パンとの出会いがコンセプトだけに、どのお店のどの商品が届くのかは箱を開けるまでわからないワクドキ仕様、というわけだ。
開封してみると、「ノトヒバカラベーカリー」なるパン屋さんのロゴが。
同封のメッセージカードには、お店の由来や大切にしていることなどが記されている。
▲写真提供:ノトヒバカラベーカリー
ちなみに今回送られてきたノトヒバカラベーカリーは、2017年創業の石川県金沢市のパン屋さん。
能登の名産木材である「能登ヒバ」+「〜から」+「ベーカリー」という店名にあるように、店舗スペースのいたる所に能登ヒバを使用し、その空間の素晴らしさとおいしいパンで地元ではすごく評判のお店らしい。
▲写真提供:ノトヒバカラベーカリー
お店のこだわりは「おいしさ」と「健康」。
トレーサビリティのしっかりした小麦、自家熟成の酵母、ミネラルの豊かなドイツ産の岩塩など、厳選素材で作った多種多様なパンを提供しているのだそう。
紙の包装を解くと、一品一品ビニールでパッケージされた冷凍パンが詰まっている。
▲賞味期限は製造日から1カ月
今回封入されていたのは「玄米甘酒ロール」「蜂蜜豆乳クランベリー」「ライ麦酵母の栗とくるみのカンパーニュ」「黒一味と岩塩のフォカッチャ」「黒ゴマポテロール」「Ryeショコラレザン」そして「あさニコ食パン」の7種類。
焼きたてをその場で冷凍、箱詰めして発送しているのだそう。
▲写真提供:ノトヒバカラベーカリー
こうして筆者は、知らない街の知らないパン屋さんのパンに、自宅に居ながらにして出会ってしまったわけです。
しかし、まずは食べてみないとわからない。
パンがいちばんうまいのは「焼きたて」のはず。冷凍したパンにそこまでのおいしさを求めてもいいのだろうか。
解凍してオーブントースターで焼くだけ。画期的なうまさ
さっそく試食してみることにしよう。
パンスクでは、どのパンも自然解凍してからオーブントースターで3分ほど焼けばおいしく食べられるようになっているという。
室温にもよるが、解凍時間の目安は1時間ほど。未開封の状態で室内にそのまま置いておけばよし。
さっそくオーブントースターに入れてスイッチオン。待ち遠しさひとしお。
▲「ライ麦酵母の栗とくるみのカンパーニュ」
ライ麦独特の風味とくるみの素朴な味わい、栗のこってりとした甘みが実にいい。
表面にほんのりと焼き色がついたパンを取り出して、いざ試食。
うーん、外はカリカリ。中はホカホカでしっとり。それよりなにより、もっちり感のすごさに驚いた。これは初めての感覚だ。
パンって、こんなにもちっとしてたっけ!?
この「外カリ」と「中もち」のギャップというかコントラストは、カルチャーショックを受けるレベル。これがパン本来のおいしさなのか!
冷凍庫から出してすぐに食べたい時には、パッケージの端を切り、そのまま電子レンジ(500W)で30〜50秒ほど温めてから焼いても大丈夫。
冷凍していたとは思えない焼きたて感が楽しめる。
それに、とても手軽だ。これなら、忙しい朝の時間帯や小腹が空いた深夜でも気軽に食べられるだろう。
種類ごとによりおいしく食べる焼き直し方がある
パンスクのパンは、解凍してオーブントースターで焼き直すだけで十分においしく食べられるように考えられているのはわかった。
そして、会員ページではさらに踏み込んで、多種多様なパンの味わいをより楽しむための焼き直し方法が紹介されている。
考えてみれば、食パンやデニッシュ、バゲットのようなハード系など、同じパンと言っても種類によって個性は違う。ゆえに、それぞれの風味が引き立つ加熱方法は違って当然なのだろう。
たとえば、食パンなどのようにスライスして食べるパンの場合。
▲卵、乳、砂糖を使わずに、オーガニックとうもろこし由来のレジスタンススターチ(難消化性でんぷん)と玄米甘酒を使用した食パンである「あさニコ食パン」
腸内環境の改善と血糖値のコントロールに優れた、ノトヒバカラベーカリーの独自開発品。
解凍せずにスライスしてそのまま焼いたほうが、中はふっくら、外はサクッと焼き上がる。
▲「あさニコ食パン」(左)はあっさりとした優しい味わい。「蜂蜜豆乳クランベリー」(右)は蜂蜜の甘みとクランベリーの酸味が心地いい、軽い感じの爽やかなパン
ともにあっさりめとは言いつつも、小麦の存在感ともっちり感が強くて食べごたえあり。
かたや、菓子パンや惣菜パンのような具材入りのパンはそのままの状態でもおいしい。
▲「黒ゴマポテロール」。全粒粉独特の風味とたっぷり入った黒胡麻の味わい、そして、サツマイモの濃厚な甘みが絶妙にマッチした絶品
焼きたての味を楽しむには、アルミホイルをパンに被せてトースターで3分ほど加熱。予熱で4〜5分置くのがおいしい食べ方。
トースターから出してホイルを開くとほのかに湯気が。
ひと口含むとパン生地の温かさが舌に伝わる。焼き直したほうが、外のカリカリ感と中のもっちり感が引き立ち、素材それぞれの味わいが際立っている。
このほか、会員ページで紹介されている「デニッシュ系」や「ハード系」、「ふんわり&もっちり系」など、5種類に分かれた 「よりおいしく食べる焼き直し方」は、基本にちょっとしたアレンジを加えるだけなのだけれど、よく考えられている。
ともあれ、冷凍したものなのに、これだけの「焼きたて感」を再現できるのだから、本当に最近の冷凍技術はすごい。
「パン屋さんが家に来てくれたらいいのに」から始まった
▲画像提供:株式会社パンフォーユー
もう少し知りたいことが出てきたので株式会社パンフォーユーに連絡してみた。対応してくださったのは、パンスク事業責任者である包 直也(つつみ・なおや)さん。
──なぜ「パンスク」のサービスを立ち上げることに?
包さん(以下・敬称略):焼きたてのパンっておいしいですよね。パンのある生活は本当に幸せ。そのことをいろいろな方にお伝えしたいと思っていた時に、パンフォーユーの冷凍技術と出会いました。これなら、時間や距離に関係なく、お客様に焼きたてのおいしいパンを食べていただくことができる。事業化できると思ったんです。
──「パンフォーユーの冷凍技術に出会ったことがきっかけ」ということは、もともとはパンフォーユーのスタッフではなかったのですね。
包:もともとは新卒からプログラマとしてWebや検索システムの開発を行っていました。前職ではAIマーケティングベンチャーのCTOを務めていたのですが、30代は好きなことに力を尽くしたいと思って、ずっと大好きだったパンに関わることのできるパンフォーユーに飛び込みました。
──異色の経歴ですね。どうしてサブスクリプションだったんでしょう?
包:「パン屋さんが家にやって来てくれたらいいのに」とずっと思っていたんですよ(笑)。定期的にパン屋さんを巡り歩くことができたら楽しいけれど、忙しくて日常的には難しい。遠方のパン屋さんならなおさらですよね。サブスクリプションサービスにすれば、この悩みが解消できるんじゃないかと思ったんですよ。
▲画像提供:株式会社パンフォーユー
──「パン屋さんに行けないのが悩み」って、本当にパンがお好きなんですね(笑)。
包:ホントに大好きなんです。私だけじゃなく、パンスクはパン好きが集まっているチームなので、そのあたりの感覚は共有できているのではと。
──契約ベーカリーの開拓や選択基準にも関わってきそうです。
包:そうですね。開拓についてはスタッフが行ったことがあったり、実際に食べてみて感動したお店、ネットで見つけて「行ってみたい」と思ったお店を一軒一軒訪ねて、お願いして回っています。選ぶ基準は「大規模展開や通信販売をしていないお店でありながら“感動するパン”を作っていること」でしょうか。
──現在の契約ベーカリー数は?
包:2020年5月の段階で10店です。全国100店舗以上のパン屋さんから問い合わせをいただいていて、今後は順次増えていく予定ですので期待していてください。
パンの「ほんわか感」は巣ごもり生活の潤いになる
パンスクを利用して思ったのは「焼きたてのパンって、やっぱり本当においしい」ということ。
ノトヒバカラベーカリーの7品の特徴はどれも「強烈なもっちり感」なのだが、焼き直して食べたほうが引き立つし、パンに入った素材それぞれの風味もより際立つ印象。
これこそが独自の冷凍技術の効果なのだろう。パンの個性はベーカリーによってそれぞれ違うけれど、どの契約ベーカリーのパンも、ノトヒバカラベーカリーのパンと同様に、焼き直したほうがきっとよりおいしく楽しめるはず。
▲「黒一味と岩塩のフォカッチャ」。じわっとくる黒一味の辛味が絶妙。夕食か夜食に食べたい
オーブントースターさえあれば、自宅でおいしい焼きたてパンが楽しめる手軽さも嬉しい。
▲「Ryeショコラレザン」。もっちりというより柔らかな生地に練りこまれた、甘さ控えめなオーガニックチョコチップと、レーズンの酸味の組み合わせがいい。「大人のおやつ」
そして、肝心のコスパについて。これについては、利用者それぞれで印象が変わるかもしれないというのが正直なところ。
▲「玄米甘酒ロール」。ちぎった時に甘酒の匂いがほんのりと。あっさりとしながら中はもちもち。飽きのこない味だ
1カ月に6〜10品のパンで月額3,990円はけっして安い金額じゃない。
けれど、普段は行けない全国の、地場の小規模ベーカリーが手塩にかけて焼いたオリジナルのパンが届き、自宅にいながらこの高いレベルの味が楽しめるという付加価値を考慮すると、パン好きにとっては高いとは言えないだろう。
それに、量的な部分でいうと、不思議なことにたくさん食べなくてもお腹が満足してしまうというのがあるのだ。
「パンを食べてる感が半端ない」というか、その理由はよくわからないのだけれど。
それよりなにより、おいしい焼きたてパンが醸す、他にない「ほんわか感」。
新型コロナ騒動の渦中ということもあってだろう。
焼き直したばかりのパンをひと口食べた時の安心感が半端ない。
パンの匂いを嗅ぐ。食べる。ホッとする。
先が見通しにくい毎日の巣ごもり生活に潤いを与えてくれる。
パンの力って、すごい。
ということで、パン好きの方はぜひ、いちど試してみることをオススメします。
配達ごとに送り先を変更することもできるので、なかなか会えない家族や恋人、友人といった近しい人たちにプレゼントして、ほんわか感のおすそ分けをするのもいいのではないだろうか。
書いた人:渡邊浩行
編集者、ライター。アキバ系ストリートマガジン編集長を経て独立。日本中のヤバい人やモノ、面白い現象を取材するため東へ西へ。メシ通で知ったトリの胸肉スープを毎日飲んでるおかげで、私は今日も元気です。でも、やっぱりママンの唐揚げが世界一だと思ってる。
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July 20, 2020 at 06:30AM
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