
住宅街に飲食店や物販店が点在する彦根市後三条町。一軒の居酒屋の入り口に、バリエーション豊かなパンが並び、食パンのシルエットが入った
「この前、買ったパン、おいしかったよ」。立ち寄る高校生や家族連れの声に、笑顔で応じる門川幸世さん(44)。26年間の会社勤めを経て、2020年10月に開業したばかり。母ひで子さん(74)が経営する店を間借りしてのスタートだ。
県内の信用金庫などに十数年勤めた後、08年に近江八幡市の自宅に近い金属加工会社に転職し、事務職を担当した。20年春に長男は就職し、長女は高校に進学。2人の子どもの進路が決まり、平穏になるはずだった心境は、その前後から揺れ始めた。
新型コロナウイルスの感染拡大で、会社の受注が激減した。5、6月は休業日が多くなり、出勤日は月のほぼ半分程度に。給料もダウンし、「国の定額給付金の10万円があって一時は助かったが、その後は主に食費を切り詰めてやりくりした」。
出社しても仕事はほとんどない。「椅子に座っているだけなのに、減ったとはいえ給料をもらえる。その現状に耐えられなくなった」
思い悩んだ末、決断したのは、趣味のパン作りを仕事にすることだった。
友人の誘いで始め、14年2月から月1回、京都市内の天然酵母のパン教室に通った。「一人で行う生地作りや発酵、焼成などの工程が、味わいや食感に反映することに充実感を覚えた。天然酵母や、小麦の産地など素材にもこだわるようになった」。2年半学んで指導者の資格を得て、自宅で教室を開講。県内で開かれるマルシェなどに月1、2回出店し、好評を得ていた。
店を出したい。唐突な申し出に、周囲は反対した。「勤め先があるだけでありがたいのに」「コロナで特に飲食業が大変なはず」。しかし、ひで子さんは、コロナで打撃を受けていたにもかかわらず、「自分の人生なんだから自分で決めなさい」と伝え、開店資金のない娘に、「間借り」を認めた。
店名は「
「初めての自営業。はやらなかったらどうしようという不安もあるが、自分の店を持てるよう頑張るだけ」。独立することが、背中を押してくれた母への恩返しだと思っている。(名和川徹)
からの記事と詳細 ( <4>パン作り 好きを仕事に - 読売新聞 )
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