プロフェッショナル
大阪府豊中市にあるベーカリー「Pane Volare(パネ・ヴォラーレ)」のオーナーで、ブーランジェ(パン職人)の永美翔(ながみ・しょう)さん(29)は中学時代、パンの魅力にとりつかれた。きっかけは、理想のパンを追求する少年の姿を描いた人気漫画「焼きたて‼ジャぱん」。暇を見つけては同市の手づくり総合教室「ホームメイド協会」でパン作りを楽しんだ。
「食」への関心から進んだ調理科のある高校で、和食、洋食、中華料理などを学ぶうち、ブーランジェとしての知識を習得したいという思いが〝増幅〟。独立開業することも見据え、卒業後、授業の8割以上が実習という神戸製菓専門学校(神戸市中央区)製パン本科に入学した。
仕込み、分割、丸め、成形、焼成などさまざまな授業があった。学校1階にあるカフェでパンの製造・販売の手伝いをしたことや、ホームメイド協会(大阪市北区)での飾りパン作りが今も強く印象に残る。
授業では1日に数個のパンで済んだが、カフェでは毎日20個以上、商品としてのパン作りに没頭。「おいしい」の声が届くたびに喜びを味わった。通常のパン生地をあえて発酵させずに焼き上げて成形する飾りパンに興味津々になったことを含め、「実習は社会に出てブーランジェとして店を持つための貴重な体験になった」と、何でも吸収したいという好奇心にかられていた当時を振り返る。
卒業後、大阪市北区の「POMPADOUR(ポンパドウル)」で約1年間、「ROUTE(ルート)271」で約2年半の間、箕面市の「SunnySide(サニーサイド)」で約5年間、ブーランジェやマネジメントスタッフとしての経験を積んだ。揚げカレーパンで爆発的な人気を呼んだサニーサイドでは、油まみれになりながら1日に約1800個のカレーパン作りに励み、作業スピードの重要性を実感したという。
今年10月にオープンしたパネ・ヴォラーレ。イタリア語で「まじめにコツコツと長く翔(と)び続けられるように」との願いを込めた店名。ハシビロコウをあしらった店のロゴは「普段は飛ばない鳥で大事な時には羽ばたく」との思いを込めてデザインしたという。
日々の作業は、毎朝4時ごろに工房に入り、11時の開店までに棚やテーブルに並べるパンを仕上げ、その後は、パンの仕込みや次の日の準備などに取り組む。1日に約50種約千個のパンを仕上げているが、「惣菜ものをはじめ、外皮が堅いハード系や果実などのデザート系も大量の仕込みになるので体力がいる」と、現場の厳しさを吐露する。
オープンして約2カ月半。テイクアウト専門のため、新型コロナウイルスの影響はあまり受けていないという。自家製天然酵母と父親の故郷・丹後半島(京都府)の米を使った自慢のパンは具が多く、しっとりとした味わいから人気が高い。甘く、風味がいいデザート系も好評で、土、日曜には焼きたてのパンを前に行列ができるほどだ。
「今後は米以外にも野菜や果物など丹後半島の特産品を使ったパンのラインアップを増やし、フランスの魚料理を生かした新商品の開発に打ち込みたい」。念願の独立開業を果たし、走り出したばかりの経営者の挑戦は続く。(高橋義春)
<パン職人になるには>
製菓・製パンの専門学校などで、プロからの実習や座学を通し、現場で通用するパン作りの知識と技術をバランスよく身に付けるのが一般的。また、進学が難しい場合は、パン屋でアシスタントやアルバイトとして働きながら修業をするという方法もある。
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