一世帯あたりのパンの消費量が全国一の岡山で、県北部の農家で栽培しているパン用小麦「せときらら」の収穫が始まった。今年は豊作だといい、地産地消を進めようと県内産の小麦でパンをつくっている関係者たちも喜んでいる。パン好きの住民が多い都市といえば、神戸、京都が知られているが、岡山でも大人気で、葬儀や法事でパンをふるまう習慣もあるらしい。岡山のパン事情を探ってみた。
黄金色のせときらら
麦秋の6月上旬、岡山県津山市の畑で黄金色に実った小麦をコンバインが次々と刈り取っていく。せときららの収穫風景だ。
農事組合法人綾部西の代表理事、高山勝義さん(72)は「麦の穂一本当たりの実の数が多く、一粒一粒が充実している。今年は豊作になった」と話し、目を細めた。
市によると、せときららの栽培は平成27年、7ヘクタールで始まった。製粉会社からの人気も高く、昨年には60ヘクタールに拡大。収穫量は16トンから210トンに増えている。
岡山市北区の「焼きたてパン工房ラッセン」の代表、福島健さん(45)は「せときららは外国産と比べるともちもち感が強く、生産者もわかっている点で安全性が高い」と話す。
せときららを製粉した「津山のほほえみ」を使用した「深煎りコーヒーあんぱん」なども販売。「パンを食べることで岡山の津山で小麦を作っていると知ってほしい」と話す。
岡山はパン好きで知られるが、そこで原材料として使われる小麦はほぼ外国産。津山の農家や福島さんのパン作りには、地元産を大切にしたいという思いがある。
購入量年間56・6キロ
岡山のパン好きは、総務省統計局のデータで裏付けられる。
平成30~令和2年平均の家計調査(都道府県庁所在地と政令市対象)によると、岡山市の2人以上世帯のパン購入量は全国ナンバーワンの年56・6キロ。全国平均が45・4キロなので岡山は年11・2キロも多くパンを食べていることになる。
同じ統計で購入金額では神戸市が3万8435円で1位。岡山市は3万6950円で2位。3位は、京都市で3万6316円だ。
港町として栄え、異人館街もある神戸のパン好きはイメージ通り。京都も人気のベーカリーショップが多く、パン好きが多いという。しかし、麦の生産が多いわけでもない岡山でなぜパン消費が多いのか。理由は判然としない。
法要でふるまう
食文化論に詳しい美作大学短期大学部(岡山県津山市)の藤井わか子教授に聞くと「岡山での消費量が多いことについて明確な理由は不明だ」というが、興味深いことを教えてくれた。「岡山や鳥取、島根には、お葬式や法事にあんぱんなど菓子パンを持ち寄り、参列者にふるまう風習がある」というのだ。
中国地方に根付く意外なパン文化。さらに、源流をたどると、島根県にまでいきついた。
「辰屋」として大正8(1919)年創業の老舗、松江市末次町のパン店「パンタグラフ」では予約限定で「法事パンセット」を販売しているという。
パンタグラフの島(しま)貫(ぬき)宏次社長は「先々代の社長のころから法事パンを扱っており、法事用パンは当社から始まったと聞いている」という。
「昭和の時代、法事などでのお茶うけの和菓子代わりに当時高級だったあんぱんで参列者をもてなし、習慣として定着していったのでは」と推測する。
岡山県を中心に約80店舗を展開する大正8年創業の岡山木村屋(本部・岡山県倉敷市中庄)でも、法事や贈答用の「酒種あんぱん」(10個セットなど)や、約180種類のパンを販売し、毎月平均5種類の新作パンを発売している。
同社の野崎雅行・取締役部長兼社長室長は「100年以上続く地元企業として、さらに伝統あるパンに加え、新しいパンも味わって楽しんでもらい、岡山のパン食文化が発展すれば」と話していた。(高田祐樹)
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