カレーパンブームの到来は誰の目にも明らかだろう。もちろん以前からパン屋の人気者ではあったものの、専門店が増え、ホテルでも提供されるようになり、コンビニではスタメンに選ばれている。
そもそも、なぜカレーパンブームは起こったのだろうか? そして、焼きそばパンやコロッケパンなど、総菜パンは他にもあるはずなのになぜ、カレーパンだけがこんなにも注目を集めているのだろうか。
毎年、カレーパングランプリを開催したり、カレーパンを研究したりしている、カレーパン協会の宮脇小百合専務理事にブームの背景を開設してもらった。そして、専門店、コンビニ各社にカレーパン合戦の”戦い方”を聞いた。
カレーパンブームはなぜ起こった?
筆者は、コンビニ各社、特にセブン‐イレブンの店頭で「お店で揚げたカレーパン」のぼりを目にするようになって流行(はや)りを意識するようになった。しかし、宮脇氏からはこんな答えが返ってきた。
「可視化されたのは最近ですが、ブーム自体は5〜6年前から水面下で起こっていました。カレーパン協会は2013年に発足したのですが、15年にカレーパンを販売するイベントを二子玉川で開催したところ、非常に好評でした。
カレーパンへの注目度の高まりは、コロナ禍と関係があると考えています。三密回避のためにテークアウトを選ぶ人が増えました。カレーライスはもともと国民食といわれるほど人気が高いものの、器に盛る必要があるためテークアウトしてそのまま食べるには向いていませんでした。しかし、カレーパンであれば、ワンハンドで食べられて、価格帯もそこまで高くありません」
加えて、バラエティに富んだカレーパンの登場もブームを後押ししたと分析している。「インスタ映えするカレーパン」や、牡蠣や卵がまるまる1個入っている「具が巨大化したカレーパン」、ビーガン向けの「ヘルシーカレーパン」など「選ぶ楽しさ」が生まれたこともきっかけとなった。
同協会が毎年開催している、全国のおいしいカレーパンを選出する「カレーパングランプリ」の投票数も増加傾向にあるという。19年は約1000票だったのが、今年は約4800票と大幅な変化があった。
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なぜ「焼きそばパン」ブームは起きないのか?
同じ総菜パンの焼きそばパンやコロッケパンには、なぜブームが来ないのか。その理由について宮脇氏は「アレンジ”力”」と説明する。
「先ほど、具が巨大化したカレーパンの話などをしたと思うのですが、カレーパンはアレンジのポテンシャルが高い商品なんです。揚げカレーパンに焼きカレーパン、チーズを上にかけたものなど多くのやり方があります。
カレーライスも黒いカレーやグリーンカレーなどバリエーションが豊富です。工夫の幅が他のパンと比べて格段に広い点が強みだと思います」(宮脇氏)
確かに街の専門店でも、クルトンをまぶして食感を強調するカレーパンやカレーうどんが入ったものなども目にすることもある。専門店を多く見かけるようになったが、ブームの火付け役となった店はどこなのだろうか。宮脇氏が注目しているのは神奈川県鎌倉市にある「Giraffa(ジラッファ)」だという。
カレーパンブームの火付け役「ジラッファ」
ジラッファは、観光客の多くが食べ歩きをする街として有名な鎌倉の「小町通り」に面しているお店。もともと店主がカレーパン好きだったこともあり、「カレーパンと言えば」でみんなが想起するようなお店を出そうと決めた。ホテルや和食料理店、カレー専門店などで10年以上働いていたシェフを採用し、20年12月に店をオープン。
過去最高で1日に1500個売り上げるほどの人気ぶりだ。コロナ禍で観光客が減っているものの、平日では300〜400個ほど、休日は600〜800個ほど売れる。専門店の出店数増加やコンビニがカレーパンの販売強化に努める中で、ジラッファの差別化戦略は「揚げたて」にあるという。
今は、セブンが揚げたてカレーパンを提供してはいるものの、オープン当時、揚げたてを食べられる店は少なかった。店頭で揚げたてを提供することで「おいしい」と話題になっていった。また、具にチーズをたっぷり入れることで、食べたときに伸びるチーズを写真に撮ってインスタグラムに上げる人もいるという。
鎌倉という土地柄も人気を押し上げる。関東でも有数の観光地のため、幅広い世代の人が訪れるのだ。加えて、校外学習など学校の行事も多く、食べ歩きの店が多い小町通りは常ににぎわっている。
ジラッファ以外のカレーパン専門店も、ツワモノぞろいだ。ホリエモン発案の「小麦の奴隷」のザックザクカレーパンは開業3カ月で1万食を達成。全国各地に出店している。また、沖縄発の「もとむのカレーパン」はA5ランク黒毛和牛を使用したカレーパンを販売していて、他社との差別化戦略を取りながら拡大を続けている。
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コンビニ各社の戦い方は?
ファミリーマートの主力商品は「ファミマ・ザ・カレーパン」(130円)。21年3月にリニューアルし、発売から2週間で200万食を突破。現在までの累計販売数は1300万食となっている。
「当時、パン販売の核となる定番商品の強化を図っていました。その中で、カレーパンは市場で人気定番メニューではあるものの、弊社の惣菜パンの中では売れ行きは中位で売れ筋商品ではありませんでした。商品を分析した結果、おいしくなる可能性を秘めていることが分かったのと、近年のカレーパンブームにも後押しされ、リニューアルすることになりました」(広報担当者)
具材をビーフカレーに統一、スパイスを後入れし、生地の国産小麦粉の配合を調整するなどの改良を重ねたという。リニューアル前は、中堅程度だったカレーパンは同社が販売する約100種類のパンの中で3番目に売れている商品に成長した。
「ミニファミマ・ザ・カレーパン3個入」(150円)という小さいサイズも提供する。また、「半熟たまご入りカレーパン」(180円)などアレンジを加えた商品も販売している。
「ファミマ・ザ・カレーパン」一点集中のファミマと異なり、ローソンのカレーパンはバラエティに富んでいる。現在、販売するカレーパンは全部で4種類。定番から糖質を抑えたもの、半熟卵入りなどお客のニーズに合わせて商品を開発しているという。
最も売れているのは定番の「スパイス香るビーフカレーパン」(130円)。毎年リニューアルを重ねており、前回リニューアルは21年2月だった。9月時点で、ローソンが販売するパン全体の売上ランキングでは、4位にランクイン。17種類のスパイスを加えたり、隠し味に昆布出汁を入れたりすることで、旨みを引き立てている。
同社はラインアップの多さについて、「秋冬はパン人気が高まる傾向にあります。カレーパンを含むパン全体でいろいろな種類の商品展開にチカラを入れていきます」と話した。
セブンは「揚げたて」で対抗する。6月から東京都内で「お店で揚げたカレーパン」(149円)の販売を開始した。袋入りのカレーパンとは具材や生地を変えているという。現在は神奈川県と東海エリアにも販売エリアを拡大しており、今後もエリアを拡大していく予定だ。
レジ横のショーケースに並べられており、今までパン屋や専門店でしか味わえなかった「揚げたて」を訴求する。売上数は非公開としているが、幅広い層から好評だという。
日本人が好きなカレーが入っていて、片手でサクッと食べられるカレーパン。まだまだブームは続くだろう。パン屋に専門店、ホテルにコンビニとプレイヤーがひしめく中で、「カレーパンといえばあの店」の称号を勝ち取るのはどこだろうか。
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