和食に飽きつつある皆さま、そろそろワインとチーズで乾杯!はいかがでしょうか? でも、どんなチーズにどんなパンを合わせれば? いや、どんなパンにどんなチーズを合わせるのがいいの? そんな悩みにも答えてくれるのが、本連載「このパンがすごい!」筆者、池田浩明さんです。ゲストに石島久美子さんを招き、「世田谷パン祭り2019」で池田さんが開いた満員御礼のセミナー「ずるいチーズ」から、今夜すぐに楽しめる、パンとチーズの「ずるい」マリアージュ、六つの具体例をご紹介します。(&w編集部)
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1.焼きそばパン(市東製作所)×パルミジャーノ・レッジャーノ(イタリア)
池田浩明(以下、池田)「えー、チーズを入れると急にパンがおいしくなるという事象が確認されておりまして、今日はそういう組み合わせばかりをご紹介したいなと。僕自身がチーズのことをいろいろ勉強したいと、そういう気持ちで企画しました」
「ずるいチーズ」セミナーは、池田さんのそんなご挨拶から始まった。池田さんと一緒にパンとチーズの組み合わせを考えてくださったお相手は、CPA認定チーズプロフェッショナルで、シュヴァリエ・デュ・タストフロマージュ(フランスチーズ鑑評騎士)の称号を持つ石島久美子さん。
石島久美子(以下、石島)「ずるいチーズってことで、一応、普段なかなか合わせない、ずるい感じを考えました。チーズがすごくおいしいので、チーズもたくさん楽しんでいただければ」
ということで、最初に出てきたのは、なんと、焼きそばパン! 市東製作所名物の調理パンとチーズを合わせるという、最初からずるい感じ満載だ。
池田「ここの焼きそばパンは、焼きそばのソースにバルサミコを入れていて、それがもう、ずるいんですね。けっこうフルーティーです。このソースとパルミジャーノ、両方のうまみ成分がぶつかり合うスパーク感が面白いですね」
石島「焼きそばには、こういうパルミジャーノみたいなハード系が合うと思います。パスタにかけたり、リゾットで召し上がったりしますし。パルミジャーノが作られている地域は、バルサミコ酢が作られているところと同じなんです。だから合わせてみました」
パルミジャーノは、あたたかい料理の上にスライスして乗せたり、残ったパンを入れたスープにかけたり。サラダに入れてバルサミコ酢をかけたり、用途は幅広い。ジャリジャリしているのがアミノ酸。熟成期間が長いものほど、チーズの水分が抜けて、うまみが濃縮され、ジャリジャリ感が出てくるそうだ。
2.山食(グリーンサム)×リコッタ(イタリア)
焼きそばとチーズの興奮もさめやらぬうちに、次に出てきたのが、食パンにふわっと乗った、柔らかい感じのチーズ。「365」の杉窪章匡シェフがプロデュース、シェフの荒井章吾さんが送り込まれている、グリーンサムの食パン「グリーンブレッド」。ここに、リコッタチーズが乗っているのだ。
池田「ふつう食パンには、トーストしたらバターをぬるじゃないですか、そこに、リコッタ、来た!」
石島「最初が焼きそばパンだったので、ちょっとだけ口を1回すっきりさせてもらおうと思って。パンにリコッタチーズを乗せて、今日はキュウリをのせて、ちょっとブラックペッパーをかけてみようと思います」
池田「パンとチーズの合わせ方の法則としては、こうやって、よくある組み合わせからちょっと変えると面白くなりますよね。たとえばハムとチーズが定番のところを、チーズだけブルーチーズに変えるとか。蜂蜜とバターが定番なら、バターをブルーチーズに変えてみるとかね。パンにキュウリをのせるのって、イギリスの貴族が好きな食べ方で、僕もはまって研究したことがあるんですけど、キュウリは皮をむくと苦手な人でも食べられる。極めたい人は皮をむくといいですよ」
3.レーズン食パン(市東製作所)×ラングル(フランス)
次に出てきたのは、市東製作所のレーズン食パンと、「ラングル」というフランス・シャンパーニュ地方のチーズの組み合わせ。
池田「市東製作所の市東さんは、パーラー江古田とサワムラにいた人です。共通店は小麦が濃いこと。小麦の中心部だけを使うと大吟醸という感じで上品な味になるんだけど、外側まで使うとオリャーっていうような、小麦が濃い味になる。その“オリャー系”のお店2店舗にいただけあって、小麦がもともと持っている風味を生かしたレーズン食パンです」
合わせるラングルは、いわゆるウォッシュタイプのチーズ。表面を洗ったり、塩水で軽く拭いたり、ブラッシングしたり、いろいろな方法があるが、ラングルは優しく洗って作られる。洗うことでちょっとねばねばしたり、香りが強くなるのだという。
石島「シャンパーニュ地方で作られているので、やはりシャンパンによく合うと言われています。フォンテーヌ(泉)といって、上にくぼみがあるんですね、チーズってだいたい、熟成させるときに反転作業っていうのをしている。重みで下がるのをまたひっくり返して、きれいに形を作るんですけど、ラングルは裏返しません」
池田「めんどくさがりなんですね?(笑)」
石島「いや、そういうわけでもなくて、伝統的な作り方です(笑)。くぼみのところにシャンパンやワインを入れて食べる人もいます。焼いて溶かしてもおいしいですよ」
池田「えええー、フォンテーヌ、いいですね、それずるいですね」
4.カレーパン(グリーンサム)×カマンベール・ド・ノルマンディー(フランス)
次はカレーパンと、カマンベールチーズという、またいかにもずるい組み合わせの登場だ。
池田「杉窪さんのお店は何でも手作りなんですが、どれもおいしいんです。このカレーパンのスパイスカレーも、ルーから調合しています。で、合わせるのが、カマンベール・ド・ノルマンディーですね。名前に“ドなんとか”って入ると、おいしいんですか、やっぱり」
石島「はい、ドなんとかが決め手です(笑)。カマンベールチーズっていまスーパーでもいろいろ売られていると思うんですけど、本家本元は、ノルマンディーで作られています。ノルマンディーで伝統的な方法で作られているものに関しては、このAOPマークがついています」
池田「味としては違うんですか?」
石島「もとのミルクが全然違います。加熱せずに無殺菌乳で作られているので、いろんな風味が残っていて、深みがあります。最近では、低温殺菌乳の使用が認められることもあるので、かならずしもそういう作られ方だけとは限らなくなってきていますが」
池田「カマンベールの外側の、かぴかぴっとしたところはどう対応すればいいでしょう?」
石島「食べて大丈夫です。白カビタイプと言われているものなんですが、チーズの回りに白カビが生えています。カビなんか食べられるの?っていわれる方がいらっしゃいますが、わざとつけています。苦手な方ははずしていただいても」
ここで池田さん、前から気になっていたという質問を、石島さんに。
池田「あのー、パンの耳、耳好きっているんですけど、チーズの外側が好き、外側がうまいっていう人はいるんですか?」
石島「……うーん、あんまりいないと思います!」
5.ブリオッシュ(クレッセント)×ブルー・スティルトン(イギリス)×ジャム
次は、ちょっと甘い風味のブリオッシュに、なんとブルーチーズ、さらにそこにジャムを添えるという、池田さんの言葉を借りるといかにもめくるめきそうな一品が配られた。
池田「茨城県の龍ケ崎市のクレッセントというところのパンです。茨城はユメカオリっていう小麦を作ってるんですけど、こういうブリオッシュみたいに、ふくらむ力が必要なパンも作れる小麦が茨城ではきちんとできるんだということは伝えたいですね。まず、パンにジャムをのせていただいて、その上にチーズを乗せる?」
石島「はい、あ、ジャムは池田さんの手作りなんですよね?」
池田「ジャムは手作り、2年連続で手作りなんです。僕、震災以来、岩手の陸前高田の応援で『希望のりんご』っていう活動をしていて。その一環で、津波で生き残った畑のりんごの木のオーナーになっています。毎年この時期とれたてのリンゴが送られてくるので、それを食べていただきたいと、昨日、一生懸命ジャムを作りました」
池田「これはどういう感じでこの組み合わせに?」
石島「これはブルーチーズっていわれているもので、チーズの中に青カビを生やして作っているんですね。青カビのチーズは苦手だっていう方はいらっしゃるんですけど、意外に食べてみたらすごくおいしい。世界3大ブルーチーズといわれるものがあって、フランスのロックフォール、イタリアのゴルゴンゾーラ、あとイギリスのスティルトンなんですが、これはエリザベス女王が大好きというのでも有名です。赤ワインとあわせる方が多いですが、甘口ワインとも合います。ブルーチーズの強さが、ジャムやワインの甘さでさらに倍になっておいしくなります。ブリオッシュが、ちょっと卵も入っているような、ふわっとしたおいしいパンなので、デザートパンのような感じに食べてもらえたらいいかなと思いました」
6.ノアカレンズ(市東製作所)×鶴居チーズ ゴールドラベル(日本)+板チョコレート
そしていよいよ本日最後、市東製作所のノアカレンズと、鶴居チーズ、そこに、なんとチョコレートが乗ったものが登場した。
池田「これこそ、ズルイチーズと覚えていただければ(笑)」
石島「鶴居チーズのゴールドラベルです。丹頂鶴で有名な北海道の鶴居村というところのチーズなんです。風光明媚なところです。チーズ作りってすごく難しいんですけど、このチーズは本当に安定していつもおいしい。熟成期間が違うシルバーラベルもあります。どちらも数々の賞を受賞しているんですよ」
池田「どうして、こういう食べ方を思いついたんですか?」
石島「私はチョコレートが大好きで、チョコレートとチーズを合わせるのが大好きなので。あと、チーズとドライフルーツとナッツというのも本当においしい組み合わせなので、今日は最後にデザートのような感じで組み合わせてみました。柔らかいチーズとも合います。今日はカカオ70のチョコレートを使ったんですが、甘いの苦手な方は、72とか75とか合わせていただいても」
最後に、今日出てきたパンとチーズの基本的な組み合わせ方をおさらいして、ずるいチーズとパンの旅はあっという間にお開きの時間に。締めくくりは、チーズ専門店にお勤めの石島さんから、お店の活用術を。
石島「まず、好みのタイプをお店の人にお伝えいただけるといいと思います。こういうのが食べたい、こういう飲み物と合わせたいとか、子どもと一緒に食べたいとか、言ってもらえる方が、よりぴったりのチーズをご紹介できるので、どんどんおっしゃってください」
池田「昔聞いた名言で、『すべてのチーズ嫌いは食べず嫌いである』というのがあって(笑)。たまたまあまりおいしくないと思ったチーズを最初に食べたから嫌いになっただけで、本当にその人の味覚とかシチュエーションに合っているチーズを食べれば絶対おいしいはずなんです。だから、あまりお店で時間がかかると申し訳ないなと思わず、こういう風に食べたいって、訊いてもらった方がいいです」
ちょっとパンを焼いたり、ナッツやフルーツを合わせてみたり、同じ地方のパンとチーズでそろえてみたり、いろいろ簡単な工夫でぐっと世界が広がることは間違いなさそう。スーパーやデパ地下のチーズ売り場、いや、チーズ専門店にも行けるようになるかも!と、うれしくなった60分でした!
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January 03, 2020 at 07:00AM
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