新聞記者を招いてパンケーキを食べる会
――映画の後半では赤旗が「桜を見る会」のスクープをしたことなどを取り上げて、ジャーナリズムの在り方についても言及しています。 内山:菅内閣を追っていく中で、総務省の幹部官僚たちが広告代理店から接待を受けていたことが明らかになりましたが、最近の政治に関するスクープは新聞発ではなくて週刊文春発なんですね。新聞の役割は何なのだろうかということを考えざるを得ませんでした。なぜ新聞がスクープを取れないのかと。 昨年の10月、菅首相が大手の新聞記者を招いてパンケーキを食べながら意見交換をするという会を開いた時に大きな批判が集まりました。ところが、パンケーキの会に参加した記者たちは「首相の行動をすべて把握するのが記者の役割なので参加するのが当たり前だ」と言います。相互に緊張感を欠いた関係になっているのでは、と疑う感覚すらないようです。 しかし、パンケーキの会で出た菅首相のコメントを発表することよりも大切なことは、現在の内閣に不正がないか、そして、実際に何が行われているのかを長期的な視野から検証することですよね。ところが、記者の人にこの点について質問すると、実売数の減少でスクープを取ったり、調査報道的なことをやる予算や時間がもう新聞社にはないと言い訳されました 。 起きている出来事の検証や不正を暴くということよりも、発表された事実を間違いなく流すということに力を注いでいる印象です。劇中で近現代史研究家の辻田真佐憲さんが解説していますが、その姿は戦前の「大本営発表」をしていた時代に近いのではないかと。 ――「スポンサーなどのしがらみなく事実を追って書きたいので、大手の新聞記者ではなく、赤旗の記者になった。そのためにハードルはあったが共産党員になった」と語る赤旗の記者が登場します。 内山:ある意味純粋ですよね。「そういう人もいる」ということを伝えたくてあのシーンは入れました。多くの人から好感が持てたと評判がいいです。
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