大分県宇佐市安心院町には“ソウルフード”とされるパンがある。地元の老舗店が60年以上変わらない味を守り製造する「牛乳パン」は人口5600人ほどの同町を中心に1日約2千個を完売する。同町周辺でしか買えず、販売日も決まっていることから“幻のパン”とも呼ばれ、県外にも多くのファンがいる。取材すると、過疎の町で個人店舗が生き残るための計算された戦略も見えてきた。
週に4日販売している同町下毛のスーパー「セルフおの」。10月末の昼前に店をのぞくと、120円の牛乳パンが500個ほど無造作に積まれていた。人通りも少なく、小規模の店で売れるのかと思いきや、中年女性やつえをついた高齢男性が次々にやって来ては三つ、四つと買い物かごに放り込んでいく。スーパー担当者は「早い時は午前中に売り切れます」と事もなげに言った。
製法は至ってシンプル。コッペパンの内側に砂糖入りマーガリンを塗って出来上がり。「砂糖のザラザラした食感とマーガリンのしつこくない味が絶妙」と同町平山の小野次信さん(70)。近くの矢野英子さん(83)は「中津の知人に頼まれて50個買うこともある」と話し、5、6個手に取ってレジに向かった。
製造元の「岸田パン」(同町折敷田)を訪ねた。店主の岸田敏光さん(68)によると、1956年ごろに父親の故・道夫さんが開発。製法や味を変えず手作りにこだわり「他はさして変わったことはしていない」という。
なぜそんなに売れる?
なぜそんなに売れるのか。きっかけは少子化だった。60年代から当時の安心院町で小中学校の給食用のパンを製造。2000年代には市内全35校に広げ、1日4千個を製造した。一見、安定しているように思えるが「とんでもない」と岸田さん。平日はパンの製造、配達、回収の繰り返し。長時間労働で休みも少ない。その割には利幅が薄く、児童生徒数も年々100人単位で減少する。2016年、将来性の乏しい給食に見切りをつけ、牛乳パンに集中する決断をした。
キーワードは「ブランドの維持」。岸田さん夫婦と長男(40)と次男(38)の4人で、製造量を1日最大2100個と決めた。卸先は同町を中心にスーパーや直売所など5カ所に絞った。発売日も週に2~4日とし、希少性を演出。“幻のパン”とネットなどで話題になり、受け取りに来ると申し出た福岡県みやこ町や同上毛町の直売所に週1日卸すようにもなった。岸田さんは「『今買わなきゃ』と思ってもらえる。だから売れ残らない」と断言する。
給食向けに製造していた頃より、家族のプライベートな時間は増え、長男は家を建てることができた。岸田さんは2年後の創業100年を機に店を譲るつもりだ。長男、次男には計6人の家族がおり「会社組織にする話も出ている」という。小さな町のパン屋さんは、「選択と集中」によって理想的な経営のお手本になっている。
(吉川文敬)
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